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SlackやChatworkでフリーランスへ「この案件をお願いします」と発注することは珍しくありません。結論から言うと、受信者を特定して送れるDMやチャットであれば、フリーランス法の取引条件の明示に使えます。 ただし、「口頭で伝えた」「チャットの流れを見れば分かる」は十分ではありません。発注時に必要な条件を、直ちに、書面または電磁的方法で相手に明示する必要があります。公正取引委員会は、2026年9月2日、日本郵便がフリーランス167名に対して明示事項の全部または一部を適切に明示しなかったなどとして勧告したと公表しています。 公正取引委員会:日本郵便株式会社に対する勧告 この記事では、制作会社や受託チームがチャットで発注する際に、最低限そろえたい条件と運用を整理します。個別の取引が法律の対象になるか、契約内容に問題がないかは、必要に応じて専門家へ確認してください。

フリーランス法で発注者に求められること

フリーランス法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)は、発注事業者がフリーランスに業務委託をした際、取引条件を直ちに明示することを求めています。対象になるかは、発注側・受託側の事業者の状況や取引内容によって判断されるため、すべての業務委託に一律で適用されるわけではありません。 実務では、対象かどうかにかかわらず、最初に条件を残す運用にそろえるのがおすすめです。発注内容、納期、報酬の認識違いを減らせるためです。 公正取引委員会は、取引条件の明示について次の点を案内しています。
  • 業務委託をしたら、直ちに明示する
  • 書面または電磁的方法で明示する
  • 口頭だけで伝えることは認められない
  • 電磁的方法で明示した後に相手から書面交付を求められた場合は、原則として遅滞なく書面を交付する
報酬の支払期日も、明示すべき取引条件の一つです。「月末締め翌月末払い」のような社内ルールがあるだけではなく、対象の発注にひも付く形で相手に伝わるようにします。 公正取引委員会:フリーランス法特設サイト

SlackやChatworkで条件を送るのはOK?

SlackやChatworkは、条件を満たせば電磁的方法による明示に使えます。公正取引委員会のQ&Aでは、受信者を特定して送信する電子メール、チャットツール、SMS、SNSなどのメッセージ機能が例示されています。 そのため、担当フリーランスに送るSlackのDMやChatworkの個別チャットは使えます。一方で、誰でも見られるSNSのタイムラインのように、不特定多数へ発信する方法は明示方法として認められません。必要な条件を掲載したページのURLを、相手を特定したメッセージで送る方法は認められています。 公正取引委員会:フリーランス法Q&A(Q41ほか) 重要なのはツール名ではなく、次の状態をつくれていることです。
  • 誰に送った条件かが分かる
  • 発注時点の条件を相手が確認できる
  • 必要な明示事項がまとまっている
  • 変更や追加があったとき、元の発注と関連付けて追える
DMであっても、会話の途中に条件が散らばると確認が難しくなります。発注用の最初の投稿を1つ決め、そこに条件をまとめると運用しやすくなります。

チャットに最低限残したい8項目

公正取引委員会が案内する明示事項は、次の8項目です。⑥と⑧は該当する取引の場合だけ明示します。
  1. 発注事業者とフリーランス、それぞれの名称
  2. 業務委託をした日
  3. 給付の内容(依頼する業務・成果物)
  4. 給付を受領する期日、または役務の提供を受ける期日
  5. 給付を受領する場所、または役務の提供を受ける場所
  6. 検査をする場合は、検査を完了する期日
  7. 報酬の額および支払期日
  8. 金銭以外で報酬を支払う場合は、その支払方法
「バナー制作をお願いします」だけでは、③の内容が曖昧になりやすいものです。サイズ、本数、素材の受け渡し、修正回数の扱いなど、案件に必要な範囲まで具体化しましょう。報酬額が未定のまま進めるのではなく、未定に正当な理由があるときは、その理由と決まる予定日を当初に示し、決まり次第、直ちに補充して明示する必要があります。 公正取引委員会:フリーランス法特設サイト

制作会社で起きやすい曖昧な発注

チャットは追加の相談をしやすい反面、当初の発注内容と追加作業の境目が曖昧になりがちです。特に次の3つは、依頼内容・納期・報酬をあらためて確認する習慣をつくりましょう。

「このバナーもお願いします」

追加のバナーが当初の本数に含まれるか、別発注なのかを明確にします。「同じデザインを流用するから簡単」という認識でも、制作・確認・納品は発生します。
このように、追加分の条件と、既存のどの条件を引き継ぐかを残します。

「ついでにスマホ版も」

PC版を納品する前にスマホ版を依頼する場合も、成果物の範囲が変わります。PC版とスマホ版の点数、必要なブレークポイント、納品データ、納期への影響、追加報酬を確認します。 「スマホ版も含みますか?」と受託者から聞かれたときに初めて決めるのではなく、発注側から更新後の条件を示す運用がおすすめです。

「修正はあと少しだけ」

「少しだけ」は、もっとも認識が分かれやすい表現です。当初の合意に含まれる修正なのか、内容変更を伴う追加作業なのかを分けます。修正の対象、期限、報酬への影響をスレッドに残しましょう。 追加作業にする場合は、作業開始前に条件を明示します。依頼した後で「見積もりに含まれていると思っていた」とならない状態をつくることが大切です。

会話と正式な発注条件を分ける

日常の相談まで堅い発注文にする必要はありません。むしろ、相談と正式発注を同じ書き方にすると、どこで作業開始の判断をしたかが分かりにくくなります。 おすすめは、会話の役割を3つに分けることです。 投稿の冒頭にラベルを付けるだけでも、後から検索・確認しやすくなります。PDFの発注書や契約書を併用する場合も、チャットには「どのファイルが今回の条件か」と確認先を残しておくと、行き違いを減らせます。

案件開始時のおすすめ運用

制作会社・受託チームであれば、次の流れを標準化すると実行しやすくなります。
  1. 見積もり・相談の段階では、依頼範囲と前提を確認する
  2. 着手前に、発注条件を1つの投稿または書面にまとめる
  3. 追加・変更は、新しい投稿で元の発注と結び付けて残す
  4. 納品、検査、承認、支払いの状況を案件単位で確認できるようにする
WakeChatは法対応を目的とするツールではありません。ただ、案件ごとに発注内容、期限、ファイル、やり取りをまとめることで、後から「どの条件で依頼したか」「何が変更されたか」を確認しやすい運用につながります。 SlackやChatworkで日常の素早い連絡を続けつつ、正式な発注・追加依頼・承認に関する情報を案件スレッドに集める、といった役割分担も選択肢です。担当者、期限、資料、進捗を同じ案件の中で扱えば、引き継ぎ時や支払い前の確認もしやすくなります。 WakeChatの機能を見る ・ 無料でWakeChatを始める

まとめ

SlackやChatworkのDM・チャットは、受信者を特定して送る形であれば、フリーランス法の取引条件の明示に使えます。一方で、口頭だけの発注や、報酬・納期・業務範囲が会話に埋もれた状態は避ける必要があります。 まずは、正式発注の投稿に8項目をそろえ、追加・変更は別投稿で元の発注と結び付ける運用から始めるのがおすすめです。法令への該当性や個別契約の判断が必要な場合は、必ず専門家に相談してください。

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