フリーランス法で発注者に求められること
フリーランス法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)は、発注事業者がフリーランスに業務委託をした際、取引条件を直ちに明示することを求めています。対象になるかは、発注側・受託側の事業者の状況や取引内容によって判断されるため、すべての業務委託に一律で適用されるわけではありません。 実務では、対象かどうかにかかわらず、最初に条件を残す運用にそろえるのがおすすめです。発注内容、納期、報酬の認識違いを減らせるためです。 公正取引委員会は、取引条件の明示について次の点を案内しています。- 業務委託をしたら、直ちに明示する
- 書面または電磁的方法で明示する
- 口頭だけで伝えることは認められない
- 電磁的方法で明示した後に相手から書面交付を求められた場合は、原則として遅滞なく書面を交付する
SlackやChatworkで条件を送るのはOK?
SlackやChatworkは、条件を満たせば電磁的方法による明示に使えます。公正取引委員会のQ&Aでは、受信者を特定して送信する電子メール、チャットツール、SMS、SNSなどのメッセージ機能が例示されています。 そのため、担当フリーランスに送るSlackのDMやChatworkの個別チャットは使えます。一方で、誰でも見られるSNSのタイムラインのように、不特定多数へ発信する方法は明示方法として認められません。必要な条件を掲載したページのURLを、相手を特定したメッセージで送る方法は認められています。 公正取引委員会:フリーランス法Q&A(Q41ほか) 重要なのはツール名ではなく、次の状態をつくれていることです。- 誰に送った条件かが分かる
- 発注時点の条件を相手が確認できる
- 必要な明示事項がまとまっている
- 変更や追加があったとき、元の発注と関連付けて追える
チャットに最低限残したい8項目
公正取引委員会が案内する明示事項は、次の8項目です。⑥と⑧は該当する取引の場合だけ明示します。- 発注事業者とフリーランス、それぞれの名称
- 業務委託をした日
- 給付の内容(依頼する業務・成果物)
- 給付を受領する期日、または役務の提供を受ける期日
- 給付を受領する場所、または役務の提供を受ける場所
- 検査をする場合は、検査を完了する期日
- 報酬の額および支払期日
- 金銭以外で報酬を支払う場合は、その支払方法
制作会社で起きやすい曖昧な発注
チャットは追加の相談をしやすい反面、当初の発注内容と追加作業の境目が曖昧になりがちです。特に次の3つは、依頼内容・納期・報酬をあらためて確認する習慣をつくりましょう。「このバナーもお願いします」
追加のバナーが当初の本数に含まれるか、別発注なのかを明確にします。「同じデザインを流用するから簡単」という認識でも、制作・確認・納品は発生します。「ついでにスマホ版も」
PC版を納品する前にスマホ版を依頼する場合も、成果物の範囲が変わります。PC版とスマホ版の点数、必要なブレークポイント、納品データ、納期への影響、追加報酬を確認します。 「スマホ版も含みますか?」と受託者から聞かれたときに初めて決めるのではなく、発注側から更新後の条件を示す運用がおすすめです。「修正はあと少しだけ」
「少しだけ」は、もっとも認識が分かれやすい表現です。当初の合意に含まれる修正なのか、内容変更を伴う追加作業なのかを分けます。修正の対象、期限、報酬への影響をスレッドに残しましょう。 追加作業にする場合は、作業開始前に条件を明示します。依頼した後で「見積もりに含まれていると思っていた」とならない状態をつくることが大切です。会話と正式な発注条件を分ける
日常の相談まで堅い発注文にする必要はありません。むしろ、相談と正式発注を同じ書き方にすると、どこで作業開始の判断をしたかが分かりにくくなります。 おすすめは、会話の役割を3つに分けることです。
投稿の冒頭にラベルを付けるだけでも、後から検索・確認しやすくなります。PDFの発注書や契約書を併用する場合も、チャットには「どのファイルが今回の条件か」と確認先を残しておくと、行き違いを減らせます。
案件開始時のおすすめ運用
制作会社・受託チームであれば、次の流れを標準化すると実行しやすくなります。- 見積もり・相談の段階では、依頼範囲と前提を確認する
- 着手前に、発注条件を1つの投稿または書面にまとめる
- 追加・変更は、新しい投稿で元の発注と結び付けて残す
- 納品、検査、承認、支払いの状況を案件単位で確認できるようにする